いろんな分野で成功した人のインタビュー記事や特集記事を読むと、このような言葉をよく目にします。
「人生を健康で楽しく過ごすには、恋をすることです。いつも恋をしていること」
既婚者でありながらこのようなことをおっしゃる人を何人も知っています。
これは日本人にとどまらず、外国の著名人にも多く見られます。
これって、不倫のススメ?
さて、不倫と言えばわが日本では、有名人の禁じられた色恋沙汰が毎月のように話題を提供します。
そして、テレビのワイドシューや週刊誌などは、この類の話を異様なほどあおりまくるのです。
芸能人、スポーツ選手、企業経営者など、不倫で世間を騒がす人々は実に様々。
日本は諸外国に比べ不倫天国だから、こんなにも不倫のニュースが多いのでしょうか?
そして、日本の庶民にはとても倫理観の高い人が多いから、有名人の不倫はここまで袋たたきにあうのでしょうか?
外国の不倫事情にはあまり詳しくないので、私には世界の中で日本が不倫天国かどうかの比較はできません。
日本人は倫理観が高いかと言えば、これはイエスでしょう。
外国人が日本人に対して抱くイメージは真面目、勤勉、礼儀正しい、おとなしい、道徳的,などです。
真面目で道徳的であれば倫理観は高いと言えます。
だが、不倫たたきと倫理観の高さが比例しているかと問われたら、簡単にイエスとは言えません。
日本の庶民が有名人の不倫を執拗にたたくのは、単なる倫理観によるものだけではないと思うからです。
これはもう、はっきり言って『妬み』『嫉妬』による感情の方がはるかに大きいはずです。
特に男性が同性の不倫を非難する場合、90%以上は嫉妬の感情に支配されていると言って過言ではありますまい。
さらに美人の女優さんが不倫相手だと、この嫉妬心はさらに燃え上がる。
嫉妬の炎はスカイツリーをはるかに超えて、富士山の山頂に届くほど激しくなります。
だが、人間は素直じゃありません。
嫉妬や妬みの感情を自分の中で『正義感』に変えてしまうから人の心とは厄介だ。
「俺は正義の使者だ。だから不倫男を叩きのめす権利がある」
はい、どうぞ、どうぞ、ニックき不倫男を二度と立てないほど思いっきり叩きのめしてください。
それで気が済みましたか?そして、その結果あなたは何を得ましたか?
「ああ、すっきりしたよ」
そうですか、他人の不倫に度を超える誹謗中傷を浴びせ、自己満足を得られたということですね。
こうなるともう、マスターベーションのような感覚なのでしょう。
不倫という名の他人同士の性行為を叩いて身も心もスッキリとは、なんだかとてもやるせない。
不倫に関係したSNSなどの書き込みを見ていると、どうも解せないことがあります。
いわゆる風俗で春を買うのは不倫ではないと思っている男が、圧倒的に多いように思われるからです。
女性もこのことに関してはあまりにも鈍感。
不倫の定義とは?の難しい論理的考察は抜きにして、ここでは配偶者以外の異性と性行為に及ぶことを不倫と呼ぶことにします。
ならば、配偶者がいながら風俗で女性の身体を金で買う世の男どもの行為は、立派な不倫です。
しかし、そんな意識がないから有名人の不倫を徹底的にたたけるのです。
「不貞行為の有名人を叩くのは、風俗など行ったことない男性ばかりでしょ」
いえ、いえ、そんなことはあり得ません。
日本中に風俗はあふれています。
ネットをググって調べてみましたが、日本にはどれほどの風俗店があって、どのくらいの数の女性が働いているのかさえ、専門家を自称する人でも把握できないらしい。
それほど多くの性産業が日本に根付いているということです。
言い換えると、風俗を利用する男性がいかに多いかという証明でもあります。
大勢の利用者がいなければ膨大な数の風俗店は成り立たちませんから。
そして、ネットの『婚活サイト』『出会い系マッチングアプリ』には独身を装う既婚男性の登録がかなりの割合を占めていることがわかっています。
そして、このような男どもは『ヤリモク』という実に立派なカテゴリーに分類されています。
これらの事例からお分かりのように、有名人の不倫をこれでもかと叩く側の人間も少なからず、人には言えない不貞行為をしていることになります。
自分と同じ行為をしたものに対して、なぜ憎しみを込めてまで叩くのかというと、これはもう最初に申し上げましたように嫉妬以外の何物でもありません。
「俺は高い金を出してあのレベルの女なのに、あの野郎はただであんないい女と」
こんな感情が心にふつふつと湧き上がるのを抑えきれないのでしょう。
そして、激しい嫉妬を掻き立てる理由がもう一つあります。
「そこには愛があるんか?」と聞かれたら、風俗組はうなだれて「そこには愛が見えない」とつぶやくよりより仕方ありません。
しかし、有名俳優とスレンダー美女の間には「はい、愛があふれています」となりますね。
だから、なお腹がたって許せないのです。
これほど風俗や出会い系アプリを利用した既婚男性の不貞行為が氾濫しているのに、世の女性どもは「我がパートナーに不倫はない」と信じこんでいるのでしょうか。
男どもと一緒になって有名人の寝物語に深い関心を寄せ、そして厳しい言葉を投げつける女性も多いのです。
不思議なことはもう一つあります。
不倫は違法ではありません。
日本には男女の不貞行為を裁く法律は存在しません。
しかし、売春は違法です。
日本には昭和31年(1956年)に施行された法律第百十八号『売春防止法』という立派な法律が存在します。
法治国家日本において法に触れない行為に罵詈雑言は浴びせられるが、違法な行為は見て見ぬふりでやり過ごす。
このように嫉妬、やっかみなどの感情は実に厄介なものだとわかります。
風俗と美容整形は似ています。
どこが似ているか?
有名な高須クリニックの高須さんのようにプライベートジェット機やヘリコプターを持つ、美容クリニックの経営者はたくさんいます。
これほど儲かるのに美容整形を受けた人をあまり聞かない不思議。
風俗も数えきれないほどの店が乱立し、利益を上げているのに利用した人をあまり聞きませんね。
その点で両者はよく似ています。
別に不倫を推奨するわけではありません。
「不倫は文化」などというアホくさいことを言う気は、さらさらありません。
でも、やっぱり考えてしまうのですよねえ。
同じ不貞行為なら『あふれんばかりの愛の交歓』と『愛なき行為』のどちらを選ぶかと言えば、99%の人は前者を取るでしょう。
突然ですが、日本初のノーベル賞作家・川端康成が書いた小説『雪国』。
主人公の島村が汽車の中でこれから会いに行く駒子に思いを寄せる場面の描写があまりにもなまめかしい。
「島村は退屈まみれに左手の人差し指をいろいろ動かして眺めては、結局この指だけが、これから会いに行く女をなまめかしくおぼえている、はっきり思い出そうとあせればあせるほど、つかみどころがなくぼやけてゆく記憶のたよりなさのうちに、この指だけは女の感触で今も濡れていて、自分を遠くの女へ引き寄せるかのようだと、不思議に思いながら、鼻につけて匂いを嗅いでみたりしていたが・・・・・」
ちなみにこの島村という人は左利きです。
ご存じのように『雪国』は島村という男の浮気を描いています。
今の言葉なら不倫です。
相手は温泉地、越後湯沢の売れっ子芸者『駒子』。
下世話な浮気話がなぜ芸術作品になるかといえば、二人の切ない『愛の葛藤』を描いているからです。
そして、世の人々の多くはいつ壊れてしまうか分らない、ガラスのような恋に憧れを抱いているから作品は受け入れられるのでしょう。
発表されてからすでに75年がたちましたけれど、いまだに読まれています。
時代は変わっても、人々の愛と性に対する願望は変わらないのです。
男と女が存在し、両者の間に愛増が繰り返される限り、不倫はなくなりません。
不倫をするタイプや理由は今も昔も、人それぞれでしょう。
しかし、人は未完成のものに興味を持ち、ハラハラするような不確かなことに惹かれるものです。
不倫にはその条件が整っているのです。
他人の不倫を口汚く罵っても得られるものは何もありません。
それどころか、自分の心が汚れるだけです。
そもそも、愛情に満たされている人は他人の不倫などに深い関心を示しません。
現状が満たされないから、強い嫉妬心が生まれるのです。
冒頭で述べた、いろんな分野の成功者が男女や洋の東西を問わず「いつも恋をしていること」の言葉。
それは不倫のススメというよりは「感性を磨くことが大事ですよ。恋をするような新鮮な感覚こそが人を成功に導く」そのように言っているのではないでしょうか。
そして「どんなことも好きに鳴ることが大事。恋をするように接しなさい」との意味も含まれているのかもしれません。
感性を磨くには、恋するよな初々しい心は欠かせないということでしょう。
誰かの不倫を責めるより、愛し愛されるために自分の感性を豊かにすることが大事です。
そして、本気で誰かに恋をしてしまったなら、そのまま突っ走れ。
人生はやけどをするほど熱くなることも大事だよ、そう言っているのかもしれません。
ウ~ン、やっぱり不倫のススメ?
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