「こんな素敵で高価なものを男の人からいただくのは初めて」といってイケメン社長の心をつかんだ由美子さんと、その一言でメロメロになってしまった坂本君。
もう、10年も会っていないが二人は幸せな結婚生活を送っているだろうか。
まあ、あの二人ならきっとうまくやっていることでしょう。
この冬には上京して会ってみようかな。
美男、美女が固い絆で結ばれた言葉が「初めて」でした。
それと同じくらいに人の心に突き刺さる言葉は、他にもあります。
「……が変わりました」の表現は男女の間は勿論のこと、ビジネスの世界にも大いに役立ちます。
例を挙げて説明いたしましょう。
昨今のゴルフブームは目を見張るものがあります。
日本ゴルフ協会の調べによりますと、この2年間でゴルフ人口は60万人から70万人増加しています。
また、総務省が5年ごとに実施する社会基本調査の2021年度速報値では、ゴルフ場の18ホール換算入場者数が年間4万人に達しました。
これは、未曽有のゴルフブームと言われたバブル期を上回っています。
この二つの調査で際立っているのが若い女性ゴルファの増加です。
ゴルフはビジネスパーソンの間で、コミュニケーションの大事なツールとなっているのは、今も昔も変わりません。
そして、広いコースで互いに離れてプレーするので、密も避けられるレジャーとして人気が高まっています。
それが昨今のゴルフブームを牽引していると言えるでしょう。
したがってゴルフをやるあなたなら、いつ何時、上司や取引先からプレーに誘われてもおかしくありません。
まだプレーしたことのない彼女だって、ゴルフを始める理由はいくらでも近くに転がっています。
説明がかなり長くなりましたが、本題に入りましょう。
仮にあなたが取引先の部長に誘われてゴルフに行ったとします。
ゴルフのお礼にこのようなメールを送りました。
「先日はゴルフでご一緒させていただきありがとうございました。とても楽しかったです」
これを次のように変えたらどうでしょうか。
「先日はありがとうございました。山田部長からアプローチの打ち方を教わり、ゴルフに対する考えが変わりました。とても楽しい一日を過ごせました」
どちらが山田部長にインパクトを与えるかは明らかですね。
自分を少し下げて、相手の優越感をくすぐってあげる。
相手の心をつかむにはこれがとても大事なのです。
「おお、そうか、こんなに喜んでもらえるとは、俺も少しは役に立ったかな。
それにしても、素直な女性だ」
あなたの一言が山田部長の心にしっかりと刻み込まれます。
そして『部長』ではなく、『山田部長』と名前をきちんと書くことも大事です。
人は誰でも承認欲求を抱えています。
相手や世間に自分を知ってもらいたい、自分を認めて欲しいという願望です。
この願望を満たす初歩が自分の名前で呼んでもらうこと。
これは自分の生活を振り返ってみると簡単に気付くことです。
例えば何度も通っている個人経営のレストランである日突然、お店の従業員から「吉田様、いつもありがとうございます。今日のご注文はいかがなさいますか?」と話しかけられたら、もう舞い上がってしまいませんか。
しかし、何年も食事に行っているにも関わらず、一見さんと同じように機械的に「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」だけでは、親近感は沸きません。
せめて目を見てニッコリ笑ってくれるだけでも「ああ、ようやく覚えてもらった」と安心感と親しみを覚えます。
これが承認欲求です。
これを日本で最も早く商売に取り入れたのが銀座の高級クラブです。
初めてのお客さんであっても、どんなに若いお客さんであっても帰るときには、ママ、店長ホステス、ボーイなどがそろって「田中さん、今日はどうもありがとうございました」と名前を呼びながら頭を下げる。
これには初めて銀座のクラブを訪れたお客さんの多くが参ってしまいます。
「よし、また今度こよう」となるのです。
銀座の高級クラブに行ったことがない人は高いだけで何が面白いのか、などと言いますけれど少なくとも人間の優越感をくすぐるテクニックには長けています。
人は誰でも自分を認めてもらいたいと思っています。
だから、自分を認めてもらう前にまず相手を認めてあげる。
それが恋愛においてもビジネスにおいてもとても大事です。
これはまた、友人関係やグループ内の人間関係、強いては家族間の関係においても有効な考え方と言えます。
今ではLINEやメールは私生活においても社会生活においても、欠かすことのできないコミュニケーションツールです。
このようなコミュニケーションツールを使って自分をアピールしない手はありません。
大事なのは相手の心に響く言葉でコミュニケーションをとることです。
相手の心に響く言葉や文章とは、突き詰めると個性です。
時候の挨拶から始まり、お礼の言葉や現状説明を淡々と並べるだけでは読んだ後、全く印象に残りません。
文章における個性とは何か?
それは書く人の感情であり、想いです。
これはメールや手紙、広告文、セールスレター、ブログでも一緒です。
書く側の心がこもっていない文章は、ホップの利いていないビールみたいなものです。
唐辛子の入っていない、ラー油のようなものです。
油揚げが載っていない、きつねうどんのようなものです。
ついでにもう一つ言わせてください。
それは、チーズの載っていないピザのようなものです。
譬えが食べ物ばかりになってしまいました、ごめんなさい。
では具体的にはどうするか?
あなたの感情と想いを言葉で表現し、相手を認めてあげることが肝心です。
そうすることによって、あなたの想いが深く強く、相手の心に突き刺さるからあなたのことが相手の印象に残ります。
まず、相手を認める、それによって自分が認められる。
人は与えることから始めると、なんでもうまくいきます。
人と人の関係は鏡のような一面を以っていることを知ってください。
書く側のこちらが感情を抑えてしまうと、読む側にも感情は湧き上がりません。
例えば、昨夜初めて二人っきりで食事に行った意中の男性に、お礼のメールを送るとしましょう。
「夕べのイタリア料理、とっても美味しかったですね。
また、ご一緒してください』
触ればやけどしそうなほど熱々の二人ならこんな文章でも十分ですが、次あるかないかの微妙な間柄だったら、このメールではゲームオーバーの可能性大です。
『昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。
正直、ピザがあんなに美味しいと思ったのは初めてでした。
太郎さんと一緒でしたので楽しくて、ついワインも飲みすぎちゃいました。
また、機会があったら是非、ご一緒させて下さい」
せめて、このくらいは書いていただきたいものです。
赤字の『初めて』をさりげなく入れておくだけで、相手の受け取り方はがらりと変わります。
太郎さんから返信があって
「そう言ってもらえると、うれしいです」
と書いてあったら、ほぼ次もOKですね。
夕べの食事中に太郎さんが
「このお店の雰囲気、好きなんだよなあ」
と言っていたら文章が変わります。
「太郎さんが選んでくれただけあって、お店の雰囲気がとても素敵でした。
あの雰囲気は私も大好きです」
太郎さんのセンスは素敵です、とほめているのですから短くても相手には十分伝わります。
子どもをほめられると親は自分がほめられたよりうれしいもの。
自分が選んだものをほめられると、誰でも喜びは倍増するものです。
次のような書き方も有効です。
「昨日はピザをいただいたけど、パスタも美味しそうですね。
次機会があったらパスタを食べてみたいなあ」
まあ、よほど嫌われない限り、パスタも食べさせてあげたいなあ、と考えるものです、男は。
そして意中の男性を一挙に追い込む方法があります。
「昨日のお礼に次は私がご馳走したいのですけれど、太郎さんは昨日のお店がよいですか、それとも和食にしましょうか」
人間は一つの案を提示されるよりも、AとB二つの選択肢を与えられ方が断りにくい、と言うデータがあります。
実は、オンライン広告やセールスレターでもこの方法は良く用いられています。
『通常価格は12,000円。
今ならなんと45%引きの6,600円でお求めいただけます」
「え、どちらにしようかな?当然45%引きで買った方が得よね」
買う気がなかった人でも、つい二者択一の罠に引きずり込まれてしまうのです。
今日のテーマである「……が変わりました」も相手に大きなインパクトを与えることはお伝いした通りですが、彼のハートをグサッとやるにも有効です。
「初めて」と「……が変わりました」の組み合わせは無敵ともいえる強烈なインパクトを与えます。
『昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。
ピザがあんなに美味しいと思ったのは初めてでした。
太郎さんと一緒でしたので楽しくて、ついワインも飲みすぎちゃいました。
なんだか、楽しすぎてイタリアンやワインに対する考え方が変わってしまいました」
文字で伝える文章は、少しオーバーなくらいで丁度よいのです。
その方が読み手の心に響きます。
ポイントは3つです。
・初めてのことです
・考え方がすっかり変わってしまいました
・ありがとうございます
『考え方が変わりました』は『初めて』と同じ効果を引き出します。
どちらも相手が特別な存在であることを示す言葉です。
何度も言いますが、人は誰でも認められたいと願っています。
あなたと一緒だったから、これほど楽しかった。
考えが変わるほど大きな影響を受けました。
これほど相手を認める言葉はありません。
彼は承認欲求を満たされ、ほめられて満足感を得られるのです。
ハートをドッキューン。
礼儀正しく「ありがとう」も絶対に忘れないことです。
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